スノーボード好きの仲間とともに、「サラリーマンの休日を豊かに」をコンセプトに創業した。 そのようなボードは十数万円することもあるが、Lehman Stickのボードは5万前後だ。海外の工場と直接取引し、自らネット販売をすることで、低価格を実現しているという。 毎日の出社が当たり前だった生活から、フルリモートへと変わった。ほぼ同じタイミングで、山田さんは地方移住を決める。その理由は「スノーボードをしたいから、ただそれだけ」。 せっかく場所に縛られない生活ができるならと、当時頻繁に通っていた群馬県沼田市に家を借りた。 「沼田のこともあまり知らなかったし、スノーボード以外で行ったこともありませんでした。でもだからこそ、ある意味『行ったらおもしろいんじゃないか』と思って」と、山田さんは移住を決めた当時について振り返る。 その間、神奈川県茅ヶ崎市に家を購入した。沼田ではスノーボードを満喫できるが、夏は海の近くに住んで別の趣味であるサーフィンを楽しみたいというのが理由だ。いわば沼田は冬の住処、茅ヶ崎は夏の住処である。 「地方移住へのハードルが下がったと思います。2個でも3個でも、拠点はあればあるだけいいという発想になりました」 2022年7月、厚生労働省は「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を改定し、働き方改革の一環で副業や兼業の普及を推奨している。同年の経団連の調査によると、回答企業(275社)の70.5%が、副業や兼業を「認めている」「認める予定」と答えた。 山田さんが勤務するメルカリも、社員に副業を推奨している。副業の商談が平日の日中に入っても、メルカリ側にスケジュールを公開して時間を確保できるという。 「メルカリでは自己紹介をするときに、副業についての項目がよく入るくらい、副業をしている人が多いです」 山田さんは平日メルカリで勤務しながら、土日も含め毎日3時間ほど副業に時間を割いている。Lehman Stickの販売会や試乗会が土日にある時は、毎日働きづめのような状態になることもあるというが、二足の草鞋はきっちり履き替えており「ずっと仕事をしているのとは全然違う感覚」だと語る。 好きなことを仕事にできるのは、ひと握りの人間だけ。好きなことを仕事に、だなんて夢のような考え。好きなことだからこそ、仕事にはしないほうがいい……。趣味と仕事にまつわる議論は、いつも尽きない。 両者のバランスには「いろいろな考え方がある」と前置きしつつ、山田さん自身は「年齢とともに変化した」と話す。 「新卒での仕事に最初から興味があったかというと、違いました。その時は、本気でやれば好きになると思っていて、与えられたものをがむしゃらにこなしていました」 もう1社に勤務したあと、「大好きなスノーボードを仕事にする」ことを前提に動き出す。 「そう考えると、今は本業も副業も『好きなこと』につながっています。頑張ったから好きになるのではなく、今はただ好きなことをやっているだけ。とても心地良いですが、こうなるにはある一定の条件、ある程度のキャリアやスキルが必要だと思うんです」 新卒、もしくは新しい業界に入ってすぐの状態では、経験不足もあって「好きなこと」を100%仕事につなげるのは難しいかもしれない。 だが、中堅社会人に差し掛かる頃には、それなりのスキルや知見も身についてくる。「好きなこと」と仕事との関係を見直すには、絶好のタイミングだ。 「20代後半になれば、それなりに会社の戦力になるし、好きなことを前提に動いてもニーズがある。世の中にインパクトを与えるパワーを備えて、いい感じになってくるのがこのくらいの年齢からなのかもしれないですね」

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