日本産科婦人科学会は2020年、新型コロナに感染した際の低用量ピル服用について、注意喚起を出していました。 しかし日本産科婦人科学会は10月、BuzzFeedの取材に応じ、新型コロナ感染時でも軽症や無症状の場合は低用量ピルやホルモン補充を中止しなくてよいという見解を明らかにしました。 近く日本産科婦人科学会は「OC・LEPやHRTなどのエストロゲン製剤使用に関する注意」を修正する提言を出す予定です。 日本産科婦人科学会の特任理事で、新型コロナウイルス感染対策担当の川名敬さん(日本大学教授)に取材しました。 「現時点では十分なエビデンスはないものの」と前置きした上で、海外の学会などが発表した文書を参照し、中止や他の方法への変更の呼びかけをしていました。 OCとLEPは低用量ピル(OCが避妊用・LEPが月経困難症治療用)のことで、HRTは更年期障害のためのホルモン補充療法です。 元々、エストロゲン製剤を使う低用量ピルなどでは血栓症のリスクがあり、処方の際などには医師から説明があります。新型コロナ感染では、そのリスクが高まるとの懸念が示されていました。 注意喚起では、以下のような指摘をしていました。 《COVID-19では、全身性炎症により凝固能が亢進(こうしん)する。OC・LEPやHRTなどのエストロゲン製剤使用により動静脈血栓症のリスクがわずかに上昇することが知られており、これらの女性がSARS-CoV-2に感染した場合、血栓症リスクの更なる上昇が懸念される》 その上で、新型コロナが重症や軽症でも呼吸症状がある場合は、低用量ピルやHRTの中止などを提案。軽傷や無症状の場合では、「エストロゲン製剤以外の方法についても検討」としていました。 しかし2020年にこの注意喚起が出されたあと、同学会や関連団体などは、さらなる情報を含めた更新や呼びかけなどは行ってきませんでした。 注意喚起が出た2020年当時は、まだ新型コロナという感染症自体が未知で研究も進んでいませんでした。 しかし川名さんは、各国での2年余りの間の研究の結果、「学問的には(新型コロナ感染時の低容量ピル等の服用で)血栓のリスクが上がるというエビデンスはないという結論になっています」と話します。 「WHO(世界保健機関)を含め海外の学術団体からも論文などが出ましたが、科学的には未だに答えは出ていません。しかし、傍証があり結果的には問題ないということになってきています」 「一時は懸念されていた新型コロナ患者の血栓リスクについて、複数の海外の論文を統合し分析すると、コロナ感染で血栓リスクは上がらないという結果が出ています」 「新型コロナ感染者も、20代などの若年層が多くなっていますし、低用量ピルのユーザー層とかぶります。軽症や無症状の場合は、服用をやめる必要はありません」 海外では、血栓リスク上昇を懸念し、避妊目的の低用量ピル(OC)の服用を止めた結果、予定していない妊娠が増えたという論文もありました。 その結果、過去2年の研究からも、日本産科婦人科学会が文献を引用していたアメリカとスペインの団体は、今年になって情報を訂正していました。 ただ、新型コロナの症状が重い場合には注意が必要だといいます。 「入院を要するような呼吸不全がある重症の場合は、中止した方がいいのではないかという見解になっています」 人工呼吸器などを使用している場合はそもそも、ホルモン剤等の服用ができませんが、新型コロナが重症になり入院している場合は、新型コロナの主治医への相談が必要です。 また、川名さんは新型コロナワクチンを接種する際も、「低用量ピルやHRTの服用も止める必要はないです」としました。 サムネイル:getty image

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